忍び音 第壱参章「過ぎ行く夕凪」



もしも二人が忍びでなければ


   この瞬間はとても幸せだっただろう。




明け方、村に帰り、父と母そして村のものと共に婆様を追悼し見送る。

ゆっくりと流れ行く婆様の亡骸を見つめた。

しかしは涙を見せようとしなかった。

心に決めたから、婆様の敵を討つと、今度こそ。


「さよなら…婆様。そしてありがとう…」














葬儀も終え、部屋に戻り久々の母と父と共に食事を取る。

三ヶ月前となんら代わりのない。

これでいいのだろう。

これで。





「母上、父上。私は明日また、敵地に向かいます。」



母と父は顔を上げを見る。

「心が決まったのですね」

「はい。」

「無理はするなょ」

「はい。」

「無事に帰ってきてくださいね。」

「大丈夫です。」

そうとだけ言って食事を食べ終えて部屋に入る。



小さな棚から、昔婆様が作ってくれた髪飾りを取り出した。

「待っていてください。」


心を決めたはもう…


  悲しき運命をたどるしかなかったのだろうか――――






そして、次の日。


はその髪飾りを髪に挿し



村を後にする