忍び音 第拾六章「愛憎劇の終幕」
この時を喜んだ。
彼は居ないけど、これは彼からの贈り物だと
そう信じた。
妊娠発覚から早一週間。
やはり、母親はすごい。そお実感した。
の体と生活の変化に、妊娠を悟ったのだ。
「やっぱり…そおだったのね。」
「だまっててごめんなさい。」
「…誰の子なの?」
その質問の返事ができなかった。
だから…こんなことになたんだろう。
その返事がないのは
きっと、相手が幼馴染のブン太君だから。
恥ずかしかったのだろう。
そんなことを母が考えていたとは
は少しも考えなかった。
にとって相手はただ一人。
雅治。
そして、夜。
行き成りのブン太の訪問で、母の誤解に気づいた。
「ブン太……」
「…ちょっと来い!」
ブン太に腕を引っ張られあの滝へとつれてこられる。
「ブン太…いたぃ。どうしたの?」
「分かってんだろぃ!なんで早く言わなかったんだよ」
子供のことだろう…そお思った。
「相手は…あいつだろ?」
「ぅん…。」
「どうすんだよ?」
「………ごめんね。ブン太。私、やっぱり彼が好き。」
ブン太は唇をかみ締め押し黙る。
「だから…このこを…生み…「許さない!」
「えっ?」
「そんなこと許さない。俺はお前が好きだ!言っただろう!」
ブン太の表情はどんどん曇ってゆく。
「俺が、お前を手に入れるために…どれだけの事…っ…」
その言葉を言いかけてブン太ははっとに向きかえる
「………ブン太?どう言うこと?」
「…………っ」
静かにブン太は目をそらし、背を向ける。
そして、話し始める。
今までの愛憎劇を。
「俺はを好きだった。ずっとずっと昔から。」
はブン太を見上げる。
「だから、がが他の人を好きになった変化にも気づいた。悔しかった。」
「でもどうしようもなかった。」
「そんな時ちょうどよく、の初任務について知ったんだ。
だから俺はそれを利用した。」
「自ら望んで敵地に行きわざと怪我を負った。」
「えっ…」
「それでもは、帰ってこなかった。」
は顔をそらし、うつむいた。
「だから、村の人には嘘を言って、婆様を俺の手で…「もういい!!」
「もう……いいょ。ブン太。」
「……。俺は最悪だ。」
「ブン太……最悪なのは私だよ。ごめんね。今まで気づけなくって。」
「いや、気づいてもお前は俺を選ばなかった。きっと同じことだっただろう。」
「御免ねブン太。」
「……。」
二人の間に沈黙が流れる。
とても長い沈黙だったが二人にとってはとても短かった。
二人の思いが交差し。時が止まった。
「私、村を出る。」
「なんで??!もう、行くあてなんてないだろ?」
「だって、このこを生むのにここには居られないって思ってから。」
「俺の子だって言って生めばいい!」
「駄目なの…それじゃ。このこが幸せになれない。」
「……。」
「御免ね…ブン太…其れと…いままでありがとう…」
ブン太が振り返ったときにはもう、はそこには居なかった。
村に帰って、の母に事情を説明した。
母は薄々気づいていたかの様で
「そう…ありがとう」
とだけ言っていた。
後で見つかった置手紙にもちゃんとの意思が書かれており
村のものは誰一人、彼女を探そうとはしなかった。
こうして、愛憎劇は幕を閉じる。
たくさんの悲しみと愛と共に―――