私の大好きなは優しくて


とてもとても優しくて


  でもその優しさは私だけに向けられているの?

****「優しさ」****


駅の時計広場でまだかまだかと時計を見る少年が一人

そこに、あわててやってきた少女が駆け寄る。

「ごめん!秀一郎君。」

「おはよう。ずいぶん遅かったね。」

かなり待たせたから…きっと怒ってるだろうなぁ〜
はそう思い、頭を下げようとしたが

「よかったぁ〜。何かあったんじゃないかと心配してたんだよ」

かえて来たのは優しく心配の一言だった。

「えっ?秀一郎君怒ってないの?」

「ん?怒ったほうが良かったのか?」

「いやぁ・・・いぃ…ごめん。早く行こう?!」

いつも、思っていたことだが、秀一郎君は本当に優しい。

部活をやっているときにでもマネージャーの私を一番気遣ってくれる。


「どの映画が見たい?」

「んーー。あっ!コレ!このラブロマンス!」

「ラっ!ラヴっ…////」


優しいだけじゃ無く微妙に純粋で可愛い。



「どっ…どんな感じの内容なんだ?」

「んーーーと…身分違いの恋愛で、女性の片思い。」

「ハッピーエンドじゃないのか?」

「ぅーん。相手の男性は凄く紳士的で、たくさんの女性に優しく人気が有るの。」

「そうか…で?続きは…?」

「その先は知らないのwだから、一緒に見よう?」


そこまでストーリを簡単に言うと、秀一郎君も興味を持ってくれたのか
「いいねぇ!じゃあ見よう」といってくれた。



「何か買ってこようか?」

席について、まだ、開演までの時間が少し有るので

と、秀一郎君が提案する。

「うー…ん。ぃぃよ^^大丈夫w」

「そっか。じゃあまた、欲しくなったら言ってくれ。」

「うん。ありがとう。」

ほんとに優しいなぁ〜と思い、ぼーっと考えていると

ブザーが鳴り映画が始まった。







少しずつ流れる映画。


KISSシーンもあったりした。


最後は、やっぱりハッピーエンドではなかった。


でも、すごく引き寄せられる映画だった。








「これ見てよかったな^^」


エンディングが終わり、明かりがともった瞬間、横にいた秀一郎君が話しかける。

「ぅん……でも…」

「でも?」

「誰にでも優しいじゃない?相手の男性が。」

「あぁ…まぁ…言っては悪いが、紳士と言うより八方美人だな^^;」

「その彼に、言いように遊ばれて最後は…ちょっと寂しかったなぁ〜」

「ぁあ…そうだな。」


そこまで言って、自分が不陰気を暗くしてしまった

と気づき、は話をそらす。

「でも、まっ!吸い込まれるようなお話だったよね^^」

「だな^^。じゃぁ…コレからご飯でも食べに行ってそこでまた語ろうか」


そうだね。と言ってその場を二人は後にした。







ご飯も食べ終わり、帰宅する途中。

は、いきなり秀一郎に質問した。


「ねぇ?秀一郎君。」

「ん?どうした?」

「秀一郎君は凄く優しいね」

「ぇ?そうかな?」

「ぅん……。」

元気の無い声で返答する自分を少し覗き込む秀一郎。


「その…優しさは、誰にでも優しいの?」



「?」



「だったら…ちょっと…うんん…かなり寂しいな。」




「え?」



そう言って向き直ったの瞳には涙がうっすら浮かんでいた。


…!」



「ごめん。変なこと言って」



「変じゃない…。それに…俺が優しいのは…だから。」






その瞬間、

涙でぬれた瞳はさらに大きく開いた。



「秀一郎…くん?」



「俺は。女の子にどう接したらいいのか分からない。けど…

 好きな子を目の前にしたら、どうしようもなくて、優しい気遣いしか

 出来なくて…。だから…」



「……ありがとう」


精一杯の気持ちを、ぐちゃぐちゃになりながらも伝えてくれた秀一郎に

は凄く嬉しかった。



「ごめん…きちんと伝わらなくて…。」


「そんなこと無い!ちゃんと伝わった。」


「…そうか?なら良かった。…好きだよ。




「ありがとう。……私も…ッ好き」













街頭に照らされて抱きしめあう二人は、今日見た映画とは

正反対の凄くピュアなラヴストーリーをハッピーエンドでむかえるのでした。