これは少し前のお話。

   俺の人生を変えてしまった

     
   ―――――――――――出会いのお話。

  

 
  SCRATCH NO・U 「encounter」



ここは人があまり近づかない森。

そこで俺は信じられない者を目にすることとなる



寒い冬が終わり、何もかもが新しく清々しく始まる春

俺は、春休みを利用して兄と一緒に海外旅行をすることにした。

行き先はロシア。

その際立ち寄った小さな村で、変な噂を耳にして、俺たちは今に至る。


今、いる場所は人気がまったくない森。

村人の話だと最近ここで少女が目撃されているらしい。


「兄貴、ほんまにここに女の子がおるん?」

「知らんわ。せやけど…俺としては気になんねん、職業病やわ。さき帰っててもぇえで、蔵之助」

兄貴は子供の成長や心理に関する発達の研究をしている大学の教授だ。

日々、研究を重ねそれについての論文などを発表している。

年はかなり離れているが、しっかり者の兄貴を俺は尊敬していた。

「職業病ってのも分かるけど、いくら探してもらちがあかん、二手に別れよか。」

「せやな…なら俺はこっちに。お前は向こうや」

「了解や」

いつまでたっても見つかるわけがないと思いつつ自分も気になってしまい

探すのを手伝う。二手に分かれることにし、歩き続ける。




一時間位は経っただろう、あたりは薄暗く一雨来そうな様子だった。

「なんやぁ〜天気悪なってきたな…。」

雨宿りできそうな所あらへんかなぁ…と思いあたりを見渡していると

ポツポツと額に冷たいものが当たる。

「わぁっ・・・降って来てもうた」


少し小走りであたりを見回しながら走っていると小さな洞窟を発見し

いい雨宿り場だと思い駆け込んだ。

「ふぅ〜〜助かったわ…にしても、兄貴大丈夫やろか?」

と、兄の心配をする。






―――――ガサガサ



「ん?」



雨に気をとられで気付かなかったが、洞窟の奥から聞こえてくる音に気付いた俺は

兄でもいるのかも知れないと思い洞窟の奥に進んでみることにした。

「兄貴?おるんか?」


小さな懐中電灯の明かりを頼りに進んでいった

「かなり奥まで続いてんな」


洞窟は思ったより深い。

一歩一歩近づくごとに人の声に似たものが聞こえてきた。


「人の…声?」

しかし、そこに居たのは

人とは言いがたい……何か…?


「なっ……!!!!?」

暗闇の中、何も分からないまま、ただ見えるのは普通じゃない何か。

驚きの余り声を上げると、それに気付き警戒したのか、それが俺に飛び掛ってきた。


「があっ…ぅ!」



____ガシャン!!!



音を立てて落ちた懐中電灯に照らされた者は

「お…お前、なにすんねん!」

俺が探していた少女


「お前、なんで…そんな…」


しかし思っていた少女とはかけ離れていた。


「ぅぅがぁ!!」


人の言葉を話さず…暗闇の中、瞳孔を開けたまなざしで蔵之助を見つめていた。