忍び音 第参章「その恋儚い夢物語」


は、まだ日が顔を見せる前に村を発っていた。
昨日、婆様から仰せつかった任務を遂行すべく偵察に向かったのだ。




まさかそこでそれが運命の歯車を
       
       動かすことになろうとは――――――――。






「はぁ〜むちゃくちゃ広い!!迷う!」


朝早くに旅立ったせいで半分寝ながら森をさ迷っていた。
もう、敵の領地なんだけどなぁ〜


「てか、本気で眠い…。もっとお昼くらいにしとけば良かった。
 今日はただの偵察なんだし……。」


あれ?ここ――――――



「きゃっ――――っ!!!」



は寝ながらの走行のせいで足を滑らし渡っていた木から転落した。


「痛タァ〜〜〜っ」



「何奴!!」

しかも、落ちた先は敵地のど真ん中。


「お前どこから参った?事によればただでは済まぬぞ」


何?!いつの間にこんなに人が居るところだったの?!!
ぅそ?むちゃくちゃ運悪いじゃん!

「捕らえろっ!!!」


「ゎぁっわ!」


ヤバイ!ここで捕まったら、元も子もないじゃん!!
早く逃げなきゃ………!!


「そっちにいったぞ!!」


は必死で逃げるも一人対何十人やはり難しい。


「ここは…逃げずと隠れるしかないか!!」


何人かの敵忍びを撒いた後、敵地の村から少し離れた
所にあった小屋に忍び込んだ。


「ここなら…隠れることが…………」






「誰じゃ?誰かおるんか?」

甘かった…大体敵地の近く。
こんな人里むちゃくちゃ離れた所にある小屋なんて敵忍びの物だろうに
はぁ〜馬鹿だ・・・私。


とりあえず…ごまかそう。

「みゃ…みゃぁ〜」

恥ずかしい………………猫のまね。




「何じゃ猫か。」





いいのかそれでっ!

それよりチャンスだ。逃げなきゃっ!

は急いで外の様子を伺い、誰も居ないのを確認して
再度、この小屋の持ち主に気づかれぬよう出るための確認を取ろうと
振り返る…………



――――――――――ぇっ!


ゆっくりと差し込んだ日差しに小屋の持ち主にだけ光が差す。
の目に映ったのは真っ白に輝く綺麗な銀髪。
そして……優しい…まっすぐな瞳。


「……嘘。」


思わず声を出してしまったことにあせり、はその場を飛び出す。


「嘘だぁ!信じたくない!」

自分が、命を奪うはずの人が、自分の思い人だなんて
そんな悲しいこと嫌だ。

その真実にはなすすべも無かった。







「ん?……子猫が落としていった物か?」


一方、雅治は暗闇の中だったので
光の加減で運良くの顔は見えていなかった。


「鈴?」


あわてて飛び出したが落としていった物だった

「また……来るかのう。子猫。」








運命の歯車は動き出した――――――――。