狼に育てられた少女と


      その少女を愛した一人の男の物語。



 
  その少女は愛を求めた。

          その男は―――――――




  SCRATCH NO・T 「prologue」



「蔵…おきてっ?…朝…始まる」


まだ、慣れない言葉を並べ、いつもの様に早起きのが俺を起こす。

「ぁぁ…起きる…せやからもう少し寝かせて…」

「ダメ!…朝、始まる!」

まだ眠いと言う俺を見ては少し考えてベットに駆け寄った。




―――――――ばさっ!!





「うわぁっ!!寒っっっ!!何なんや?!!」


「蔵が…起きなぃから…ダメだ。」


行き成り布団を剥ぎ取られ寒さの余り目が覚める。

春だといってもまだ4月になったばかりだ。


「わかった…悪かった。・・・・・・所で、今何時や?」

「……長い針が…6のところ。」

「そっか…ならまだ間に合…ぅ?っって、!何ぼ言うたら分かるんや!
 これは6やのうて9やっ!ヤバイ!間に合わん!」

まだ、文字・数字の生活に慣れてないは間違った?と首をかしげる。

に怒っても仕方ないな…俺も。

あわてて制服に着替え朝食の準備をする。


!今日は帰ってくるん遅くなるわ。せやから先に食べとくんやで?」

「ぅん…。蔵もう…行く?」

「ぁあ、遅刻や!監督に叱られるわ(汗」

「……。」

焦りながら言う俺を見ては下を向く。




「いや…のせいじゃないで^^心配せんでぇぇょ」


そお言うと顔を上げ元気に笑顔を見せるのだった。

「いってらっしゃい!蔵」

「行ってきます。ええ子でまっててんな^^」


の頭を撫でて家を飛び出した俺は急いで学校に向かった。

俺が通う四天宝寺中学は仏教系の学校。

いつも電車に乗って二十分ってとこや。


「わっ!!その電車まったぁ!」


俺が駅に着くと駅のホームで電車が行くところだった。
急いで呼び止め、電車に乗り込む。




「はぁ〜間に合った。」


「なんや白石…ぎりぎりやな?珍しい。」


ぎりぎりで駆け込むと後ろから聞き覚えのある声がして振り向く。


「ぁ…一氏。なんや見てたん?部長たるもんが恥ずかしいわ…。」

「何や、一人暮らしは大変そうやな…。」

「あははは。ってあ、俺言わへんかった?今一人ちゃうんや。」


同じテニス部の一氏ユウジと相席をして座り話を進める。

同じ部活でも、クラスが離れているので会うのは部活くらい。

「え?お兄さん東京から帰えったん?」

「ちゃうで。兄貴は相変わらず、東京の大学で臨時教授で行ったまんまや」

「?せやったら何で?」

「実は…………妹おってん…^^;」


のことをなんと説明しようかと悩んだが、とっさに妹と言う。

「ん?兄弟…?兄貴だけや言うてたやん。」

「まぁ…せやな。なんて言うか…拾ってきてん;;」


ふと、別に隠すことでもないと思い話すことにした。

「拾ろた?!何やそれ…話が見えんで白石。」


「ぁははは。仕方ないな…」



それだけ言って…窓の外を眺めた俺は、二年前の同じ時期

まだ、春休みのさなかのことを思い出す。





との奇妙な出会い。

そして…少し視線を落として、自らの左腕に巻かれた包帯を眺め話をすることにした。




「一氏は狼に育てられた少女っておると思うか?」

「はっ?行き成り何やの?」


一氏の反応を見て再度流れ行く窓の外を見つめる。



「俺の同居人は…俺より三つ下。んで…もって女の子や。」

「何?やるやないか…白石。」


「せやけど…女の子言うても普通の女の子や無いで…」

「?何や?」











「狼に…育てられたんや…」






そして、思い起こす。


二年前の春の出会い。







俺の左腕に刻まれた傷痕とともに―――――――