海はどこまでも深く…深く…


    傷ついた私の心と同じぐらい真っ暗な海中



      波は私を呼ぶように打ち寄せる。



    愛されないなら――――いっそこのまま―――――――





  SCRATCH NO・XIII 「wave」





蔵ノ介の話を聞いてしまったはずっとずっと走った。


涙は足跡のように落ちて乾いてゆく。






「私は…いらない子…?…母さんは私なんて要らなかったんだ…」



愛されないと知ったはひたすら涙を流す。





「どうせ…いらないなら…こんな命……。」



たどり着いた海岸沿い。


を誘っているかのように波は打ち寄せる


寄せては返してく


波のように


その心はさらわれて…






の足が、また一歩、また一歩と海の中へ沈んでく。




「バイバイ……蔵……」



最後に出た名前は彼女を拾い、大切に育ててくれた人だった。













!!!!」








誰もいないはずの砂浜から聞こえた声は


最後に呟いた人の声ではなく………





!!!なにしてんねん!!」






を影で愛してくれた一人の男の人だった。






「……!」


一氏はを捕まえ、一生懸命、体温を分けるかのように抱きしめる。



「ユ……ウジ。」







「死のうなんて考えんなや!」



「でも…私…いらない子…なんだよ?」





「何馬鹿言ってんねん!はいらん子やない!」



更に抱きしめる腕に力が入る。




「俺には…が必要や!」


「ユウジ…」


が…好きやねん。」





「好き……………。でも、私、家族はいなくなっちゃった。」



「何言ってんねん!!家族は今からでも作れる、
 
 が俺を必要としてくれればもうそれで家族や」



「……ありがとう。」



「だから…戻ろう。」






そう言って差し伸べられた手をはそっととる。



「でも…好き…とか、分からない。」



「かまへん^^ゆっくり考えや」




「…………ぅん…。」




しかし


の心には今、隣にいてくれる一氏ではなく、


なぜか、ここには居ない、助けてはくれなかった



蔵ノ介の顔が心にあるのであった。














その後、数日で蔵ノ介は退院し、無事、いつもの日常が戻った。



ただ、三人の心の中には、切なく、淡い感情が渦巻いていた。