愛されたいのに…

      
      愛して欲しいのに


            愛してくれたのに…





     どうして貴方じゃなきゃ駄目なんだろう。




   SCRATCH NO・XIV 「intersection」





※主人公視点




なんで、こんなに胸が苦しいの?




今朝、朝食を作って蔵を見送ったけど…


なんか、蔵の顔見るたびに胸の奥が痛い。




「なぁ…。」


「何?蔵…。」


「一氏のこと…どう思ってん?」





ドキッとした…そんなたいした事聞かれたわけじゃないのに。



「いい人…かな。」



やましいことはないのに・・・なんか・・・胸が痛い。



「ほか……。」


「………ぅん」





それだけ言うと席を立って、蔵は食べ終わったお皿を洗ってくれた。


「じゃあ、言ってくるゎ」


そう言って、いつもの様に頭をクシャっと撫でてドアを開ける。



「いってらっしゃい」


「あぁ…行ってきます。」



いつもと変わらない光景だけど


どこか二人の間にできた壁…。



蔵ノ介が学校に行ってしまい、一人になった

洗濯物を干しながら、ベランダから外を眺める。

ふと、下を向くと、小学生の男女が仲良く手をつないでいる。





「好き…ってなんだろう。」


ユウジは私をいらない子じゃない…って言ってくれた。

けど、蔵は?…私のこと…必要じゃないんだろうか…。

私は…蔵がいないと…寂しい。



「蔵…が…いれば…ぃぃ。」









え?










自分の中で、めぐっていた思考が一気に停止する。






「ユウジ…は?」



そう、私を好きと言ってくれたユウジは…居なくてもいいの?


嫌だ・・・居て欲しい。



でも、どららか…


だったら?





 
  
     きっと






 
      蔵を









      選ぶ。









「私は…………蔵が…すき?」





こんなにも近くに居るのに

  こんなにも大切に思っているのに



      ドウシテキヅカナカッタンダロウ
























※蔵ノ介視点



俺は、あの日以来、病院でを追いかけなかったことを後悔していた。


一氏が俺にのことを愛していると言った。


正直、ビックリはしなかった。


なんとなく、どこかで気付いていた。




「俺は…のこと…」


そこまで言いかけて、言葉を止める。


その続きは…どうしても宙に浮く…

いや、気付いてはいる。



「好き」




単語ではこんなに言いやすいのに…


」と一緒にはドウシテイエナイ――――





そう、気付いてたのに…俺は知らないふりしてた。


俺の一方的な気持ちなんて、愛を知らないには…


受け止められないかもしれない。


むしろ…拒絶されたら………














二人の思いは交差する。






まだ、愛を知らない、と思っている蔵ノ介




もう、愛を知ってしまっている





愛されたいでも…愛してくれない




愛している…けど…言葉が宙に舞う。