気づかなくていい事に


      誰もが触れてしまう。



      どうしても、こんなに残酷なんだろう。





  SCRATCH NO・XII 「feeling」




病院の一室に、白石蔵ノ介と書かれた札が下がり


その中で、二人の男が会話をしていた。




「にしても、白石…たいした事あらへんで良かったわ」



「ぁあ。…堪忍。心配かけたわ。」



「そんなこと、かまへんねん。」



「おおきに……」


そう行っておどける蔵ノ介を見上げ、一氏は急に真剣な表情になり答えた。


「で?何があったんや?」



「え?」


「ごまかしても無駄や。のことで何かあったんやろ?」


そう、気付いてた一氏は蔵ノ介に迫った。


「………」



「俺。のことは知りたいねん。」


「どういうことやねん…一氏?」


今まで反応がなかった蔵ノ介が返事を返した。




「俺。のことが好きやねん。」



それを聞いた蔵ノ介はビックリして顔を一氏に向ける。


「最初にお前から話聞いた時。ありえへん思いながら,何でかすんなり受け入れれた。」



「あぁ」


「でな、初めて会った時、ちょうど俺の家族、崩壊寸前みたいになってたんや
 それを何となく、野生の感で感じとったんやろうな、は俺と一緒に泣いてくれてん。
 辛い時も一緒、嬉しい時も一緒って言ってくれたんや」


「知らなかった。」


「あぁ…すまん。俺が皆に心配かけんように、いわへんかったんや」


「ほうか。」


「なんか、そん時の温かさや優しさだけじゃなくて、一緒に過ごしてるうちに
 好きなんやなぁ〜って思ってな。」



「気付かへんかったわ。」



「なんか、白石には気付かれへんようにしてたからな^^;」


「どういうことや?」


何となく流れがつかめた蔵ノ介だったが、そこで再び思考回路が止まる。




「なぁ…白石?自分はのことどう思ってるん?」



「俺は…」


その言葉に答えを探す蔵ノ介。

だが、ここまで出ている答えを捕まえることができず、違うことを口走ってしまう。


「俺は…妹のように思ってる。」


「好きやないん?」


「好きや…妹として。」


自分で言いながら、心のどこかにわだかまりがある蔵ノ介は

このわだかまりが分からないまま、話を切り替えることにした。



少しの沈黙のあと、蔵ノ介が重たい口を開く。


「今日、俺が考え事してたんはのことや。」


「やっぱり…ほうか。」


「実は…の両親が見つかってん。」


「ほんまか?良かったやないか。」


そう、嬉しそうに言う一氏だが、悲しそうな顔をする蔵ノ介に気付き押し黙る。


「その両親に兄貴が会いに行ったんやけど…
 
 の本当の母は夫との間に子供がおらへんで、不倫相手との間にできた子供を
 
 二度、降ろしてるらしい。そんで、三度目にできたのが

 せやけど、この子も不倫相手との子で望まれない子。

 もう降ろすことができひん体やった彼女は、いらないを外国の森に捨てたんや。」



「何や…それ…それが本間に母親の…いや、人間のすることか!」



「そう…おもうやろ?俺は、あいつが毎日、

 本当の母親に会うん楽しみにしてきた姿みててん。」


「あぁ…」


「どう、話せばええんや!こんなこ……」




ガタン――――――!!!




話の途中に、部屋の扉の向こうで大きな音がして二人はいっせいに扉の方を向く。



「なんや?」



そぉ言いながら扉を開けると誰もいなかった。


しかし、そこに小さなストラップの切れ端が落ちていることに気付き拾い上げる。


「……これ…。」


と一氏が不思議そうに拾い上げる姿を見ていた蔵ノ介がビックリしたように声を上げる。


「それ!のや。・・・あかん!さっきの話聞かれた…。」


それを聞き、急いで部屋を出ようとする一氏だったが


「一氏!」


「わるぃ…俺、本気やねん。白石が大切に思う妹なら、これからは俺が一緒におったる。」


「……。」


は愛されへん子やない!少なくても俺が愛してるから」





そこまで言って部屋を飛び出る一氏を蔵ノ介はとめることができなかった。






「なんや…なんでこんなに…もやもやすんねん。」



蔵ノ介の言葉は宙に舞い…行き場のない思いは右手の握りこぶしに消えた。