*『第一章 私の家族を紹介します』*



ここ、本郷家ではいつもの様に慌しい朝が始まっていた。


姉、私の調理服知らない?洗ってたと思うんだけど」


「あぁ…それなら、たたんでおいたから、あそこに」


「あっ!ありがとうw」


ご飯を作り終えて席に着いた私に今日朝一に声をかけて来たのは

高校三年生の、なんでもパティシエになるため調理専攻の高校に通っている。


「朝ごはんは?」


「いらない!遅刻するぅぅ!!いってきます〜〜!」


私の返事も聞くことなく足早に学校に向かったの姿を見送り

ため息をつく…


「あの子いつも朝食べないで。大丈夫なのかしら?」


まぁ…今更言っても遅いか…と開き直ったとき

「おはよう」と後ろから声がして振り返る。


「ぁら、刹那。おはよう、早いわね?」


「ぁあ…今日は試験日だから」

眠そうに目をこすって席に着いたこの子は

長男坊で末っ子の刹那。

これでも私立名門高校に通う我が家唯一の秀才?なのだ。


「そうなの?じゃあ、しっかり食べなさい。頭が働くわよ!」


サラダを沢山よそった皿を刹那の前に置くと

その中ににんじんを見つけ「ぅ…」と顔をしかめた。

姉さん…」

「駄目!たべな」

きっぱりいいきった私に負け、刹那はしぶしぶと野菜を口に運んでいった。



頭もよくて、スポーツもできる、けどちょっとした所がかわいいのよね。


なんて思いながら刹那を眺めていたら


いつのまにか登校時間で、勢いよく立ち上がり刹那は

「行って来る」の言葉と共に家を出た。




「いってらっしゃい」




いなくなった玄関に向かって告げると


朝食がおいてあるテーブルに目をやる。



は…いつまで寝るのよ?」


結局にんじんを残した刹那と…食べなかった

すでに食べ終わった自分の皿と…もう一つまだ手のつけていない皿がアル。



そう、この家にはもう一人

娘がいる。



その本人の朝ごはんにラップをしようと台所に向かうと

ぐっとタイミングと言うかのようにが降りてきた。



「姉ちゃんおはよー」


「おはよ、てか遅刻じゃない?」


「んー今日は二限からだから…大丈夫」


その言葉を聴いて安心した私は

大学生はいいなぁ〜などと言い返し、の前にご飯を並べる。


「ありがとうw」

そう言って微笑むは保育士志望なだけあって可愛らしい笑顔を見せる。


「どういたしましてw其れより私仕事行くけど…戸締りよろしくね?」

「は〜ぃ!気をつけてね」


優しく気遣う妹の言葉を聞きながら、支度をして家を出た。

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」


次女のは近くの大学に私が進めて、通わせている。

というのも…

両親を早くに無くしたので、私は高卒ですぐに働いた。

も高校を出て働くと言い張ったが、親が残してくれた財産があるから…と

夢を諦めさせずに、私が無理にでも大学にやったのだ。


小さかった刹那も自分なりに努力して、学費半額免除の特待生になって有名進学校に推薦されて入ったし

も…家の家事を沢山してくれた。

そのおかげで今は調理の道に興味を持ち、アルバイトをしながら学校に行っている。




一度出た扉を振り返った私は


両親が残してくれた家を見上げ


いい家族に恵まれたと思った。






「これが私の家族です」










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