今になって思う、あの時の少女は自分の心の中だけの空想だったのではないだろうか――――――と。
『風車』
その少女・・・と出会ったのは今から3年前、わん(自分)がまだ中学だった頃の夏祭りの夜だった。
地元の毎年行われる夏祭りの夜、凛たちと別れて海に散歩に行った俺は一人でたたづむ少女を見つけた。
「ぬんつぅーらんす?(何やってるんだ?)」
普通なら通り過ぎるのだけど、つい声をかけた。
その少女が今にも海の中に消えてしまいそうだったから………
声をかけたのに何も返事をしない少女に始めは気づいていないのだと思った。
けど違う。こちらは見ている。
「いったー声が出ないのか?(お前声が出ないのか?)」
声が出ないのではと気づき、質問をしてみると、コクコクと首を縦に振る。
「そぃーかぁ〜無理して話さんでぃもひぃーさぁー(無理に話さなくてもいいょ)」
気遣ってそぉ言うとぺこっと頭を下げながらにっこりと笑った。
その笑顔がかわいくて、わんわ一瞬で恋に落ちた。
「わんは知念寛。いったぁーうちなーの人か?うちなーぐちがわはーるんさぁ〜」
(俺は知念寛。お前沖縄の人か?沖縄語がわかるのは沖縄の人だけだょな)
わんの問いかけに、は砂場に流木で言葉を書いた。
『名前は。生まれはです。おばあちゃんが沖縄なの。』
「かぁ〜いい名前やぁ〜」
そぉ褒めるとまたふんわり笑う。その笑顔がすごく天使みたいだった。
「はここでぬーがしよったさぁ〜?(何しよった)」
『私は・・・・・・・風車を回そうと思って。』
「風車?」
ふと見るとの手にはさっき夏祭りで見た風車があった。
『うん。風車を海の中で回すと、願い事が叶うって。』
「へぇ〜知らなかったさぁ〜」
えへへと照れたような表情を見せながらは、
小さな足に履いたサンダルを脱いで波打ち際へと進んでいく。
その姿をわんはじっと見ていた・・・いや・・見惚れていたの方が正しいだろう。
海の中風車に願い事を託すは、まるで天使のよううだった。
―――――それから三年。
同じ夏祭りの夜。わんは彼女との思い出の場所に来ていた。
柄にもなく風車を持って・・・・・。
途中、海辺を歩いて来ていたら子供たちが怖い・・・と泣き喚いていた。(失礼じゃないかぁ〜?)
海に入って風車を回す――――。
「・・・・いったーにもう一度会いたいさぁ〜」
「私も、会いたかったです。」
わんは後ろから不意打ちの声に驚き振り返った。
――――――――――ネガエバキットオモイハトドク