君は何故その全てを見せはしない
どれくらい強くなれば君を救える
人並みの中孤独におぼれてたんだね
君が望むなら差し伸べ続けるよ
****第五章『光へ』****
武長は一生懸命走ってやっとの思いでの屋敷に着いた。
しかし、
「大変申し訳ありません。織田様。
ただいまお嬢様はお休みになられています。お引取り下さい」
「しかし!」
「お願いします。お引取り下さい。」
武長を中に入れようとせず、ただ門前払いを食らった。
「なんでだ。…どこか入れるところ…」
もし、拒否されても武長はに思いを伝えないと終れない。
そう思っていた。
屋敷の周りを探索していると、
ちょうどの部屋の近くであろう所に入り安そうなところがあった。
「よし…ここなら…」
そう言ってよじ登り、塀を越える。
忍び込んで、部屋へ向かおうとしたとき
「でね…知ってる?」
女中の声がし、武長は身を潜める。
「何?」
「ほら…お嬢様の噂。」
の話だと分かり、武長はそっと耳を傾けた。
「なんでも…治療法が見つかってない難病らしくって…もう長くないそうよ。」
その言葉を聞いた武長は唖然とした。
ただ…そこに立ち尽くすわけには行かないので
急いで部屋に隠れようと入る。
しかし…そこは
「武長…くん?」
武長が会いたいと思っていたの部屋だった。
「!!」
「ビックリした…どうしたの?」
そう言って笑うの表情が前より痩せていることに武長はすぐに気付いた。
「いや…お見舞いに。」
「そっか…ありがとう^−^」
優しい笑顔も…どこか力ないものだった。
「実はちょっと…お見合い断られちゃって…ショック受けてたんだょ?」
その言葉に武長は更にビックリする。
「え?…お見合い…断ったのはそっちじゃ…」
「え?」
も、同じようにビックリした顔になる。
「そう言うことか…はめられた。」
武長は、恭平の言葉を思い出しそう呟く。
「だめられた?」
聞き返す、に説明する武長だったが心の中では複雑だった。
「そっか…じゃぁ…武長君に嫌われたわけじゃなかったんだ。」
「ぅん…って…?」
サラッと言うの言葉を武長はビックリしながらも受け止めた。
「私……病気なんだ。もう…長くないって。」
それを聞かされて武長はドキッとする。
「知ってる…。」
そして少しの沈黙。
「だけど…私…武長君が…」
「ストップ!!」
の言葉を遮った武長はそっとに向き直る。
そして…
深い深い…キスをする。
「先に言わせない。俺はが好きだよ。」
「武…長……くん。」
そう言うと、はそっと武長にもたれかかる。
「ありがとう。私も…大好き。」
「よかった…。」
そして、前よりも細くなったをそっと武長は抱きしめた。
「ありがとう…。武長君は私を闇から光へ導いてくれた。」
「何言ってんの?別れの挨拶見たいじゃん…そんなの嫌だよ?」
武長に会うために今まで命を延ばしたかのように
は少しずつ声を震わせてしゃべる。
「小さな…ううん…大きな幸せをくれたのも武長君。」
「俺は…がいないと幸せじゃないんだけど?」
「…そうだよね。ごめんね、私だけ…先に幸せのまま天国に還っちゃうけど…」
「?!!冗談は…」
そこまで言いかけてはそっと自ら武長に口付ける。
最後の時を知らせるように。
「大好きだよ。ありがとう…」
そして…は微笑んだ。
最後の最後まで
純粋な笑顔で。
「ッ・・・・っ!!」
まだ届かなくてもどかしくて
こんなにそばにいるのに
抱きしめても抱きしめても
心に届かない
一人で泣かないで
ほら瞳どじて感じる
暖かな手をつかんで
離さない…。