だだ、退屈なだけ。


    光も何もないこの空間。



      誰か、差し伸べたこの手に気付いて。




   

     

 ****第壱話『光へ』****


私の家は古くから伝わる由緒ある家柄だ。


でも、私は体が弱く、ほとんどこの屋敷しか観たことがない。


「はぁ〜たまには外に出たい…」


そんな呟きも部屋の中にこだまして消える。


「誰か…私を連れ出してくれないかな。」


誰でもいい…私に気付いて…私の声に答えてほしい 。










そんな事を思い過ごす日々だった、ある日。



「え?お見合い?」


「そうですよ。貴方もいい年頃でしょ?」


「でも!!私、体弱いし…いつアッチに逝っちゃうか…」


まだ、きちんとした恋もしたことない私はそんな親同士か決めた無理やりなんて嫌だった。



「そんな縁起でもない…それに、体が弱いからこそ膳は急げでしょ?」


「そんな…」


どう、あがいても自由などない。


「もし、気に入らなかったら断ってもいいから。」


「でも、断ったら…色々面倒になるんでしょ?」


「……分かってるじゃない。」


ほらやっぱり…。


私は鳥かごのなかの鳥。


どんなに大空を飛びたくったって…飛べない。




ここで力尽きて消えることも…死ぬことも…もう怖くない。


ただ…誰にも気付かれずに…死に行くほど怖いものはない。



「誰か…幸せを少し分けてください。」



そして誰かを愛したい。


そして…























一週間後―――




近くの料亭でお見合いが開かれた。


「遅くなってすみません。」


そう言って現れた殿方は、華道の次期家元とか。



「織田…武長と申します。」


そう言われ、私はそっと顔を上げる。


「…え?」







私が見上げた先には漆黒の髪

潤んだ瞳…厚い唇


初めて観る、外の殿方につい驚きの声を上げてしまった。


「どうか…しましたか?」



「ぃぇ…あまりにも…美しかったのでつい。」


普通に言ってのける私に、彼は少しの間をおき…笑い出した。


「えっと…その…私。あまり外に出ないものですから。

 その中にはこんな綺麗な殿方が…えっと…」



一生懸命説明する私を見て更に笑い出す。

何か粗相があっては、この縁談が駄目になる。


そうなったら、うちの家が危なくなる。




「あのッ…。」


「ぁ…ごめん。なんか、新鮮で面白かったから。」


「いえ…かまいません。」


なんか、普通にしゃべって…普通の人だ。

見た目はこんなに綺麗なのに。

そう・・おもった。


「ぁ…えっと、名前は?」


「あっ!申し遅れました。私、北郷と申します。」


さんね。」


「はい…。織田様は…」


「あぁ〜かたっくるしいのは止めよう。」


「え?」

「ほら…普通に話しなよ^^。それに、武長でいいよ。」


面と向かって話すのもなれない私に彼はそっと優しい言葉をかける。

「はい。」


「敬語も無し…ね?」


そう言って武長さんが立ち上がって私に手を差し伸べる。


「えっと…どこかに?」

「そ…ちょっと抜け出そうよ。」


私は温かいその手をとり立ち上がる。


しかし、足の痺れに負けて、体制を崩す。



「きゃっ!」



「危ない・・・!!」




その瞬間、私は武長さんの胸のかなに収まる。




「ちょッ……えっ!あわゎゎ……ぁ」


「大丈夫?」


見下ろした武長の顔と私の顔が近くにありすぎて

私はパニックになった。


さん?」


「………んっ…?」



落ち着かせようとだったと思う。

そっと触れるだけのキスだった。



だけど、私は恋に落ちた。