※主人公視点です。



 きっと迎えに行くから


    大きくなったら


         は僕のお嫁さんだよ。




*****「ハナシノブ」*****





幼いころの約束…。


いつだって私を支えてくれたのは、ずっと心の中にいるディーノだった。






「ディーノはもう、私のことなんて忘れたよね?」



握り締めた手のひらで輝くクロスのネックレス


ずっと大切にしてきた。


「私は…一度も忘れたことなんてないよ。」







そう言って窓から見上げた空はとても綺麗で。


あの日と同じ青色だった。




ディーノとのヤクソクの日と。




アレからの私は本当に悲しいことばかりだった。


でも、神様は優しくて、こんな小さな者でも救ってくれた。





母が死んで…今まで音信普通に近かった父が私を引き取った。



その時始めて知った事実。



父はマフィア関係の仕事をしていて、小さなファミリーのボスだった。



それだけでも驚いたのに…


さらに追い討ちをかけるように信じられない言葉を聴いた。


「私には正妻がいる。子供はいない。」



はじめに聞いた時はわけが分からなかった。


そんな私の様子にゆっくりと近づき頭をそっと撫でながら

父は続けた。




「すまない。君の母を愛していなかったわけではない。

 しかし、立場上、しかたのなかったんだ。」





望まない…正妻との結婚だったと。



話を終えて、優しく笑いかける父だったが…

私の目にはとても寂しそうにみえた。 



「父さん?泣かないで…?」


そう言って父に抱きついたときの驚きながらも

嬉しそうな父の表情を今でもハッきりと覚えてる。







私は…父と母に愛されていたと実感した。






それからは普通に女の子の生活を送った。


ボスの娘ではなく…普通の女の子。



そんな風に過ごせたのも父と…今はいないけど母のおかげ。


だから…両親に恩返しができるなら…なんだってしよう。

そう心に決めていた。




けど。







最近よくあのときの夢を見る。



ディーノとのヤクソク。


それもこれも…父にあの話を持ちかけられてからだ。











1ヶ月前―――





「お父さん…どうしたの?」


「ぁぁ、。おかえりなさい。」


「ただいま。」


父の書斎の扉を開け顔を出すと、ソファーに腰をかけた。


同じ様に前のソファーに腰をかけた父が、何時もの優しい


表情から少し思いつめたように私を見上げる。





「実は…お前に見合いの話が来てるんだ。」




私の心臓が、ドクンと響いた。




「お前に無理なことはさせまいと思っている。

 …お前も年頃だ。好きな人がいるなら断ってもかまわんよ」




そう言って顔を上げた父は優しい瞳で私をみた。



父に言われ真っ先に思い浮かんだ名前。




ディーノ……



あの時の約束。








けど…私は知っていた、この縁談が断ることが許されないことを



父はああ言ってくれたのだが、実際の所、父のファミリーの状態が良くないらしい。




だから…




いわゆる政略結婚だろう。







「いいよ。今好きな人もいないし、お父さんのためなら。」






そう言って笑顔を向ける私に

答えるように笑いかける父の笑顔は・・・あの時と一緒だった。














本当は怖い。


知らない人に嫁ぐのが。


由緒アルファミリーのボス…きっと私よりもいくつも年上。




やっていけるだろうか…








なにより・・・・

















ディーノ。
















彼のことが…頭を離れなかった。












そんな時






見合いの少し前。









久しぶりで訪れた町で




ディーノと再開した。



















―――――−――続く