いつも優しかった彼は
私なんかいなくてもいいかも知れない。
けど………私は貴方のそばがいい。
+++++『フィッチ+淳のそばで+』+++++
アレから考えてずっと悩んだ。
そうこうしていたら早くも淳の出発の日が来る。
「淳…本当に行っちゃうの?」
「ぅん…でも、たまには遊びに帰ってくるよ」
「ぁあ、そうだな、帰って来いょ」
思い思いの別れをつげ、淳は電車に乗る。
「亮……を頼んだ。」
電車に乗り込もうとした淳は振り返ってそう言った。
「あぁ…大丈夫だ。」
しっかりと受け止め返事をする。
その間、は一生懸命涙をこらえていた。
ついに出発の時間が来て、音を立てて扉がしまる。
「じゃぁ…」
そう寂しそうに笑った淳の顔が最後だった。
帰り道、涙をこらえるは歩くことがままならず
それに気付いた亮が、近くの公園のベンチへと誘導する。
「…」
最初に沈黙を破ったのは亮だった。
「ん?」
今にも流れそうな涙を必死にこらえ、顔を上げる。
その瞬間不意に温かいものが唇に当たる。
「亮?」
そして、ビックリするのもつかの間、の体は、亮に抱きしめられる。
「ごめん…俺じゃ駄目だ。」
そっと握った手が強くなる。
「俺はが好きだ。でも、の心は淳に向いてるんだろ?」
そう言われてはっとする。
「…ぅん。」
「知ってたよ。…応援するから。」
「ありがとう」
「だから…」
言葉と同時に手渡された封筒の中にはチケットとルドルフの編入届けが入っていた。
「亮?」
「今から急げば間に合うから。」
は走った。
すぐに準備をした。
親に事情も伝えた。
そして―――――――――
淳が旅立って一週間後
「では、転校生を紹介する。」
先生の言葉に生徒たちが驚く。
そう、ついこの間、淳が転校してきたばかりなのに。
「なあんだーね、最近転校生ばかりだーね。」
「んふっ。まぁいいんじゃないですか、良い素質を持っているならすぐにテニス部へ。」
「クスクス…観月がまた他校から引き抜いたんじゃないの?」
「いえ…今回は違います。」
そんな生徒たちをよそに、先生は転校生を呼ぶ。
「はじめまして。」
挨拶と共に顔を上げた転校生に淳はボー然とする。
「え?」
その瞬間、淳は立ち上がりの名を呼んだ。
「!!?」
それを聞いて、は少し恥ずかしそうに笑う。
「淳…来ちゃった。」
ホームルームが終わり、皆に取り囲まれそうになっていた
を即座に教室から連れ出し、屋上へと移動する。
「どう言うことだーね?」
「さぁ…彼女なんじゃねーの?」
「んふっ…データに追加ですね。」
そんな淳をみながら言う部活仲間。
「淳…ちょっとまって!」
「あぁ…ごめん。」
やっと屋上に着いたところで、淳はを離す。
「…ビックリしたょ!どうしたの?」
「私…やっぱり淳の隣に居たいから…来ちゃった。」
そう可愛く言うに淳は少し考えてそっと抱きしめる。
「あつ…し…?」
「…ありがとう。」
温かい言葉を言われ、安心したは涙がこぼれる。
「俺は…亮を選ぶと思ってたから…少し心配だった。」
「亮は…応援してくれるって」
「…そっか。後で電話しなきゃ。」
そう言って顔を見合わせる二人はそっとキスをする。
「…大好きだよ。」
「私も…大好き。」
この後、がテニス部マネージャーになったのは言うまでもない。
++++おまけ++++
亮「淳、どうだ?」
淳「どうって…順調だよ?」
亮「そっか…なら良かった。でも」
淳「でも?」
亮「いつか奪ってやるからな^^」
淳「クスクス…奪わせやしないよ」